超駆庵

ひまつぶし

マルチクロスの話。

マルチクロスだとかカラーニュートラルだとか言う言葉を聞いてまず思い出すのが姉のことである。

彼女はパチ物のキーホルダー型キューブをいつも持ち歩いており、少し暇が出来るとキューブを回している人であった。彼女のキューブはチェーン部分を取り外すことが出来るタイプの物で、現在メガハウスから発売されているチェーンが外れない物よりいくらか便利ではあったが、明らかにライセンス商品ではなかった。

そんな彼女にキューブの早解きで挑戦する私であったが記憶に残っている限りでは一度も勝てたことがない。

で、マルチクロスだが、彼女は「いつも同じ面から始めたのでは飽きる」と言い放ち、どの面からクロスを初めても同じようなタイムで揃えてしまう人だったのだ。当時の我々は今で言うところの簡易LBL(それもかなり手数のかかる方法)で遊んでおり、タイムそのものは最近のsub20だとかsub10だとかの人たちから見れば鼻で笑われるようなレベルだろうが、それでも彼女のスピードは見ているだけでも楽しめるほど速かった。

もう20年以上も前の話なので、恐らく現在の彼女は当時ほどのスピードで揃えることは出来ないだろうし、どこぞの奥さんになって子育てと仕事で奔走している彼女なので今さら「おねーちゃん、LBL法覚えて天下を取ろう」などと誘ってみたところで「そんな面倒くさいことはやりたくない」とあっさり答えてくれることだろう。姉弟揃って面倒くさがりなのだ。

そんな感じで私はマルチクロスと聞けば世界記録保持者のFeliks氏ではなく姉を思い浮かべてしまうのだ。そして、当時の彼女がLBLに手を出していたら今頃伝説として語り継がれている人になっていたのではなかろうかと身内びいきな想像をしてしまうのである。